「パノラマとラボラトリー」という名前を聞くと、ちょっと堅いバンドなのかな？と構えてしまうかもしれない。ところが実際に音を聴けば、その印象は心地よい裏切りに変わる。彼らのサウンドはジャンルの垣根を軽やかに飛び越え、ジャズの洗練、ポップスの親しみやすさ、エレクトロニカの浮遊感を絶妙にブレンド。肩肘張らずに楽しめるのに、耳に残る奥深さがある。

ライブの場では、その音楽がさらに鮮やかに広がる。ドラムは躍動感たっぷりに空気を震わせ、鍵盤は色彩豊かな情景を描き出す。そしてayaの歌声は、澄んだ透明感と力強さを兼ね備え、観客を一瞬で物語の中に引き込んでしまう。アップテンポな曲では思わず体が動き出し、しっとりしたバラードでは会場全体が息をひそめるほど。MCでは飾らない言葉で観客に語りかけ、ステージ上との距離がぐっと縮まる。

さらに特筆すべきは、国内だけでなく海外の舞台でも高く評価されていること。世界規模のコンテストで日本代表に選ばれ、ドイツでも好成績を収めた実績は、演奏力と表現力が国境を越えて通じることを示している。つまり「パノラマとラボラトリー」の音楽は、ジャンルも言葉も超えて、人の心に直接届く普遍性を持っているのだ。

彼らの魅力は、一曲ごとにまったく違う景色を見せながら、聴く人の日常に自然に寄り添ってくれるところにある。名前の印象に反して難解さはなく、むしろ聴くほどに親しみが湧いてくる。気づけば心の中に残って離れない――そんな不思議な後味を持ったバンド、それが「パノラマとラボラトリー」だ。