初期衝動。
【予選A-3】Movie Grand Prix vol.23
開催日: 2026/02/07
「Movie Grand Prix vol.23 予選A-3」のエントリーリストを眺めながら、音楽という表現が持つ「初期衝動」の美しさについて、静かに思いを馳せていました。今回の枠には、それぞれのアーティストが抱える純粋な熱量が、加工されないままの形で収められているような、そんな生々しい魅力が詰まっています。
中でも、私の心を強く捉えて離さないのがThe Distillの存在です。 彼女たちの鳴らす音に触れた瞬間、何にも染まっていない真っ白なキャンバスに、一番好きな色を思い切りぶつけた時のような、鮮烈な「生」の響きを感じました。パンクやロックという、ある種完成されたクラシックな形式を借りてはいますが、そこに宿っているのは、借り物ではない「今、この瞬間」を全力で肯定しようとする彼女たちの体温そのものです。
特に印象的なのは、ボーカルとベースの彼女たちが重ね合わせる歌声の質感です。それはまるで、春の柔らかな光を反射してキラキラと輝く水面のように澄み渡り、聴く者の心を一気に日常の重力から解き放ってくれるような爽快感がありました。英語のリリックが持つクールな響きと、その奥底に潜む熱っぽい情熱。まだ何者でもないからこそ放てる、あの刹那的で鋭い輝きは、完成された美しさとはまた別の、胸を締め付けるような切実さを伴って迫ってきます。
SNSなどの情報が限られているという点も、今の時代においてはかえって彼女たちの純粋さを際立たせているように感じます。過剰な演出で自分たちを飾り立てるのではなく、ただ楽器を鳴らし、声を重ね、その響きを信じる。その極めてシンプルで誠実な振る舞いには、言葉を重ねる必要のない、剥き出しの説得力がありました。
「音楽を楽しむ」という、誰もが最初に持っていたはずの純粋な動機。彼女たちのパフォーマンスからは、そんな忘れかけていた大切な記憶を呼び起こされるような、不思議な魔法を感じます。今まさに何かが始まろうとしている、その熱っぽい予感。画面越しに伝わってくる彼女たちの屈託のない笑顔と、一音一音に込めたひたむきなプライドが、この予選A-3という場所に新しい風を吹き込んでくれている気がしてなりません。
このステージで、彼女たちがどんな風に自分たちの物語を刻んでいくのか。その未知なる可能性の目撃者になれることを、一人のリスナーとして、心から誇らしく、そして楽しみに感じています。最後までその鮮やかな軌跡を、静かに追いかけていきたいと思います。
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