世界がつながっていきますように、心から祈ります。
OTONOVA ONLINE 【ダンス部門 セミファイナル C】
開催日: 2022/01/07
手話とダンスで世界をつなぐ北村仁さん、
セミファイナル進出おめでとうございます!!!!!ばんざーーーーい!!!!!
はじめてみた北村仁さんの作品は「香水」でした。その動画をみたときには、衝撃を受けました。私自身、高校時代にダンス部に入って仲間とたくさんの作品をつくり、社会人になってからも少しヒップホップをならったり、コンテンポラリーやバレエや日本舞踊、ダンスバトルなどたくさんのダンスをみたりしてきましたが、北村仁さんのダンスをみた時に受けた衝撃は今まで感じてきたものとは全く違う、感動でした。美しい!とか、かっこいい!とかいうだけでなく、こんなにふうに、身近にある音楽が心にひびいてくるんだ、という驚きでもありました。その曲のメロディーと、リズムと、歌詞、それらのおりなす世界観が深く描き出され、視覚にうったえてくるのです。
手話は日本語に並ぶ言語ですが、その「手で話す」ということが、こんなに素敵なことなのだと気づいたのです。それまでの、手話へのイメージは”おそろしく難しいもの”でした。今までの人生で、きこえない人に出会ったことが一度もなかった私にとって、手話は遠い遠い世界のものだったのです。それが、手話とダンスで世界をつなぐ、パフォーマー北村仁さんに出会ったことによって、ぐぐっと身近になりました。手話は、手の動きのみでなく、その位置、向き、また顔の表情や、視線、まゆ毛やアゴの動きなども大切なポイントです。全身のあらゆるパーツで、その曲を表現する、その動きの一つ一つに意味があったりする。それって、ただなんとなくその曲をきくとか、たとえ何度くりかえしきいたとしても見えてこなかった何倍ものその曲の世界観がそこにひろがっているということなのです。そこには、何かを伝えたいという想いがいきいきとくりひろげられ、まるで舞台や映画をみているかのようなストーリーがうきあがってくるのです。
これは本当に、エンターテイメントの革命だと思います。エンターテイメント(entertainment)とは、楽しみ、気分転換、気晴らし、遊び、息抜き、レジャーと訳されますが、私は良質なエンターテイメントとは人の感情を大きく揺さぶるものであると思っています。面白い、楽しい、のみならず、悲しくなるもの、苦しくなるもの、切なくなるもの、時には心にモヤモヤしたものを残すものかもしれません。その揺さぶりが大きければ大きいほど良質なエンターテイメントだと思っています。つまりそれは、人がおりなす想いのコミュニケーションです。
実は、もともとダンス、踊るということが大好きな私でしたが、そんな私も一時は全くダンスと関わりのない生活をしていた時期が長くありました。娘が1歳の時に、全く知らないまちに引っ越してきた時です。夫には慣れ親しんだ街でも、私には、土地も、人も、よそよそしく感じました。認可保育園には入れず、とりあえず、一時預かりの保育園の手続きをし、職場に復帰しました。が、月の半分は娘が発熱し、夫は多忙であったので、そのような場合でも、育児は完全に私の仕事でした。病児保育室の予約がとれても、朝8時の開所のため先生とのやり取りの後は、必死に走って電車に飛び乗らないと間に合いません。仕事にも集中できず、中途半端に切り上げ、お迎えもギリギリ。先生にもう少し早く迎えに来てほしいと嫌な顔をされた時もありました。そうか、先生も母親だから、この後お迎えに行くのだ。と後で分かったのですが。思った以上に、ワンオペ子育ては過酷でした。新しい職場、長くなった通勤時間、引越しのダンボールは山積みのまま。イライラし、子どもにもキツくあたり、休みの日さえ子どもを連れ出す元気もなく、そんな自己嫌悪を話せる友人もいず、ただ日々の生活を回していくのがやっとでした。夕食の買い物をし、ベビーカーにスーパーの袋をぶら下げて、自宅への真っ暗な坂道をのぼりながら、何かが違う。そう思っていても、じっくり考えることさえ面倒でした。子どもはかわいいのです。ただ、マシーンのように達成感のない同じ毎日をくりかえすそんな日々に、私は少しづつ慣れていき、と同時に希望を失っていきました。今思えばですが、その時の私が渇望していたのは、私がわたしとしてあるために、人の想いに触れ、また自分の中にある想いを誰かに伝えること。そして、それを受け止めてくれる場所が必要だったように思います。孤立した生活は心が死んでいってしまう。人は人の想いにふれて、自分の想いをあふれさせることで、人生を豊かにしていくことができるのです。そんな想いのコミュニケーションがたくさんできたら世界はもっと素敵になっていくのではないでしょうか。
これからの時代に求められるのは、どれだけの想いを人の心に届けられるかどうか、です。それは、伝えるではなく、伝わるかどうかなのです。アイキャッチした後、人の心ににちゃんと訴えるコミュニケーションができるかどうか、ということです。手話とダンスで世界をつなぐ、北村仁さんのユニバーサルデザインダンスが広く普及することは、想いのコミュニケーションが醸成されていくことでもあり、社会の豊かさにつながります。ぜひ、多くの人にご覧いただき、そしてその魅力を味わっていただきたいです。
そして、買い物、職場、学校、医療、公共交通機関、映画や音楽などのエンターテインメント、あらゆるシーンの中に手話が当たり前のように使われ、ユニバーサルな社会になって、この分断された世界がつながっていくことを心から願っています。
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