OTONOVA 2026セミファイナルAという大舞台を前に、まつだはるみさんのこれまでの歩みを改めて振り返りますと、私どものような世代の人間には、実に胸に迫るものがございます。1987年生まれの彼女が、幼い頃に人見知りでピアノ教室の門を叩けず、独学でキーボードを弾いていたというお話。また、音楽大学で専門的に学びながらも、人前に立つ恐怖から一度は音楽を離れたという葛藤。それは決して「遠回り」などではなく、人生の機微を知るために必要な、尊い時間であったと感じるのです。

2010年からの数年間、全く別の仕事を通じて社会の荒波に揉まれ、人間力を磨いてこられた経験こそが、今の彼女の音楽に「嘘のない深み」を与えています。特に、山口県下関市への移住を機に、新しい人間関係の中で少しずつ心を開き、再び楽器を手に取っていかれた過程には、一人の人間としての力強い再生の物語を感じ、深い敬意を抱かざるを得ません。オーボエ、ピアノ、声楽、そして音楽療法。彼女が積み重ねてきた多彩な研鑽は、今、ようやく一つの大きな川となって、聴き手の心に染み渡る豊かな音楽へと流れ着いたのでしょう。

2024年にプロとしての新たなスタートを切り、このセミファイナルの場に立つまつださん。かつて人見知りに震えていた少女が、これほどまでに豊かな経験を背負い、自分の言葉と音で勝負しようとする姿は、同世代のみならず、人生の後半戦を歩む私たちにとっても大きな希望の光です。当日は、これまでのすべての「回り道」を誇りに変えて、等身大の、そして誠実なパフォーマンスを見せてください。あなたの歩んできた日々が、その一音一音に宿り、会場を温かく包み込む瞬間を心より楽しみにしています。まつだはるみさんの物語の「今」が最も輝いていることを確信し、心から応援しております！