出演者情報を眺めていた中で、ふと目に留まったのが東京大学LaVoce所属の「ほのか」でした。アカペラという表現手法、そして日本の原風景を思い起こさせるという紹介文に、自然と興味を惹かれ、演奏を聴いてみようと思ったのが最初のきっかけです。

実際に音に触れてみると、派手さや技巧を前面に出すのではなく、丁寧に紡がれた声の重なりが静かに心に届いてくる印象を受けました。3、4年目混期バンドという経験値の高さもあり、それぞれの声が無理なく溶け合い、全体として非常に安定感のあるサウンドを作り上げていると感じます。

特に印象的だったのは、聴く側に想像する余白を残してくれるところです。情景を過剰に押しつけるのではなく、聴き手それぞれの記憶や感情にそっと寄り添うような演奏で、気づけば昔の風景や、懐かしい感情が自然と浮かんでくる。音楽が持つ本来の力を、静かに思い出させてくれるようでした。

バラード部門全国決勝という大きな舞台では、どうしても緊張感や競技性が前に出がちですが、ほのかの音楽は、そうした空気の中でも変わらず人の心に届く強さを持っていると思います。声だけで空間を支配するのではなく、場全体を包み込むような存在感は、このバンドならではの魅力でしょう。

この全国決勝の舞台で、ほのかがどのような時間を作り出してくれるのか、とても楽しみにしています。結果以上に、その演奏が誰かの心に残り、また聴きたいと思わせてくれることを期待し、心から応援しています。