またしても「Mudia」のオーディションを覗いてしまった。この数日で何度目だろうか。すっかりこのイベントの熱気に当てられてしまったようだ。前回までは、声だけで楽器の音を再現する技術や、巧みなアレンジにただただ感心していた。だが、今回のブロックを見て、また違う魅力に気づかされた。

それは、アカペラという表現方法が、いかにグループの「個性」や「色」を浮き彫りにするか、ということだ。

もちろん、ハーモニーの美しさは大前提だ。しかし、それ以上に、各グループが「何を伝えたいか」という意志が、選曲や歌声の表情からダイレクトに伝わってくる。例えば、Fikaさん、鶫さん、LARKさんのようなグループは、その名前が持つイメージのように、繊細でどこか北欧の澄んだ空気を感じさせるような、透明感のあるコーラスワークが印象的だった。

一方で、MATTERHORNさんやVENZさん、光響さんのように、名前からして力強さがみなぎるグループもいる。彼らがマイクの前に立つと、空気がピンと張り詰め、重厚なベースラインと鋭いパーカッションが、聴いているこちらの胸を物理的に揺さぶってくる。

また、紅涙さんや、男と女プロローグさんのように、グループ名自体が一つの物語を内包しているようなチームも興味深い。彼らの歌うバラードは、まるで短編映画を見ているかのようなドラマ性を帯びており、その世界観にぐっと引き込まれた。

オムニバスさんやハモっこクラブさんのように、グループ名からは想像がつかないほど多彩なジャンルの曲を披露するチームもいて、その引き出しの多さに驚かされる。こうした「選曲のセンス」も、アカペラの大きな魅力だろう。

若い頃に少しだけかじったギターでは、結局のところ既存の曲の「型」をなぞることが多かった。だが彼らは違う。Uruや宇多田ヒカルが歌うような、心の琴線に触れるメロディを、自分たちの声だけで、どう解釈し、どう再構築するか。そこには、原曲への敬意と、自分たちの音楽を届けたいという強烈な情熱が渦巻いている。

技術や調和はもちろん素晴らしい。だが、それ以上に、それぞれのグループが持つ唯一無二の「色」がぶつかり合い、混ざり合うからこそ、こんなにも心を動かされるのだと気づいた。声という、最も原始的で、最も感情が乗りやすい楽器だからこその熱量。それを浴びるように聴けるこのイベントは、本当に贅沢な時間だと改めて感じた。