百名という苗字には、自らのルーツである沖縄南部の地名から力を借り、その土地が持つ深い歴史や文化に寄り添いながら、役者として多彩な「顔」を持ち成長していきたいという強い想いが込められている。その名が象徴する通り、彼の歩みは常に沖縄の伝統と芸能への敬意に裏打ちされており、三線においては最高賞を受賞し、さらに教師免許資格まで取得するなど、沖縄文化の継承者としても確かな実績を積み重ねている。単に演じるだけでなく、「文化を未来につなぐ役割」を自ら担い続けている姿勢は、俳優としての魅力をさらに奥深いものにしている。

現在は舞台を中心に活動し、作品ごとに異なる人物像を丹念に作り上げる丁寧さには定評がある。役柄に向き合う姿勢は非常に真摯で、人物の背景や感情の機微を的確に掘り下げ、観客に強い没入感を与える。舞台上での存在感はもちろん、作品に寄り添いながらも自身の色を柔らかく滲ませるバランス感覚は、まさに“沢山の顔を持つ役者”としての真価といえるだろう。

また、伝統芸能で培った所作の美しさ、表現の細やかさ、息づかいの確かさは、演技の幅を大きく広げている。三線で磨かれたリズム感や音に対する繊細な感性は、舞台表現にも自然と生かされ、演技の一つひとつに独自の深みを与えている点も見逃せない。

文化の担い手であり、表現者として常に進化を続ける百名。沖縄の魂と舞台芸術が交わる独自の魅力は、今後さらに大きく開花していくはずだ。舞台という生の空間で、彼がこれからどんな新しい「顔」を見せてくれるのか、強く期待したい。