予選Bブロックは、まるで短編小説のオムニバスを読んでいるかのような、物語性のある音楽が多く揃っておりました。 「R&B」というジャンルの方が多いと伺いましたが、私には、それぞれが独自の「歌物語」を語っているように感じられました。

一番手として印象に残ったのは、「影夏」さんです。 彼女の歌声は、透明感がありながらも、どこか陰りのある響きを持っています。 大人の落ち着きと、少女のような無垢さが同居しているような不思議な声色。 爽やかな曲調の中にふと混じる切なさが、聴く者の想像力を掻き立てます。映画の主題歌として流れた時、スクリーンの映像をよりドラマチックに彩ってくれるのは、彼女のような声なのかもしれません。

次に、「ざわちゃん」さん。 現代的なリズムに乗せたエモーショナルな歌声には、若者特有の疾走感と、焦燥感のようなものが入り混じっていて、胸が締め付けられるようであります。 四つ打ちというリズムは、心臓の鼓動のようでもあり、聴いているこちらの気持ちまで高ぶらせてくれました。

「SEASIDE SHEEP」さんは、夜の海辺の情景が目に浮かぶような、幻想的な音楽でした。 ふわふわと漂う歌声と、都会的なギターの音色。 男女の声が重なるところなどは、音に奥行きが出て、まるで波の満ち引きのよう。曲の途中で雰囲気が変わる（転調）部分も、物語の場面転換のようで、ハッとさせられました。

そして、「Ruvi」さんについて触れねばなりません。 彼らの音楽は、非常に大人びていて、気だるげな歌い方が何とも言えない色気を醸し出しておりました。 技術で圧倒するのではなく、雰囲気で聴かせる。ウィスキーの氷が溶ける音のような、静かで贅沢な時間をくれる音楽です。 残念ながら解散されてしまったとのこと。桜の花が散るように、良い音楽グループとの別れはいつも寂しいものであります。しかし、彼らの残した音楽は、こうして私の心にもしっかりと届きました。

それぞれのアーティストが紡ぐ、四者四様の物語。 じっくりと堪能させていただきました。