モリオンガクさん
【予選B-5】水都音楽祭2026 オンラインオーディション
開催日: 2026/08/01
「薄明光線」という一曲を聴いたとき、まず感じるのは、ひとつのジャンル名だけでは説明しきれない音楽的な広がりだ。ポップの親しみやすさ、フォークが持つ生々しい歌の距離感、そしてオルタナティブ由来の少し尖った質感。それぞれが主張しすぎることなく同居しているからこそ、聴き終えたあとに単純なカテゴライズでは片づけられない余韻が残る。
モリオンガクの面白さは、その楽曲を「作品」として完成させるだけではなく、実際の現場へ持ち出しているところにある。2024年から活動を始め、横浜や新宿を中心に路上やライブハウスで歌う。その環境は、音源制作のようにすべてを整えた状態ではない。周囲の雑音、人の流れ、偶然立ち止まった観客。その瞬間にしか生まれない空気の中で歌を届けることになる。
だからこそ、モリオンガクの楽曲には「誰かに聴かせるための歌」というだけではない、ライブで育っていく可能性がある。特にシンガーソングライターの作品は、録音された瞬間が完成ではなく、歌う場所や聴く人によって表情を変えていく。その変化を確かめられるのが、現在の活動を追う醍醐味でもある。
「薄明光線」というタイトルにも惹かれる。雨上がりなどに雲の切れ間から差し込む光を意味する言葉だが、楽曲そのものにも、強烈な光で一気に照らすというより、暗がりの中に少しずつ輪郭を浮かび上がらせていくような魅力がある。派手さだけに頼らず、聴く側が自分の感覚を重ねられる余白があるのだ。
そして現在、作品はライブの現場だけに留まらない。Eggsで紹介され、Apple MusicやSpotifyの新人系プレイリストにも取り上げられるなど、少しずつ聴き手の範囲を広げている。路上で歌う一人のアーティストという段階から、楽曲そのものによって新しいリスナーへ接続していくフェーズへ入ってきたと言っていい。
ここからモリオンガクがどんな作品を生み出していくのかは、かなり興味深い。路上で磨かれるライブ感と、ジャンルの境界に縛られない楽曲性。その二つがさらに成熟していけば、今とは違う景色が見えてくるはずだ。
まだ知らない人には、まず一曲聴いてほしい。そして、その一曲だけで判断せず、ライブやSNSで活動そのものにも触れてみてほしい。曲を聴くたび、歌う場所が変わるたびに、新しい表情が見えてくる。モリオンガクは、今まさにその変化を追いかける価値のあるアーティストだ。
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