映画『金山雲丹物語』の主題歌オーディション、予選Aブロックを拝見いたしました。今回は、それぞれ全く異なる形の「歌」が集っており、非常に聴き応えのある時間となりました。

まず、私の耳を最も心地よく楽しませてくれたのは、「MIOSIC」さんであります。 男女のお二人が織りなすハーモニーの美しさ。これは、ソロの歌手には出せない、デュオならではの贅沢な響きですね。 ゆったりとした曲調は、夜の静寂によく似合います。「君が好きだったギターを弾いてるよ」という歌詞の一節が、聴く者の胸にある思い出の引き出しを、そっと開けてくれるようでございました。お互いの声が寄り添い合う様は、長年連れ添った夫婦のような阿吽の呼吸を感じさせ、大変安らぎました。

続いて、「狐の嫁入り前」さん。 不思議なお名前ですが、奏でられる音楽は雨の日に窓の外を眺めながら聴きたくなるような、しっとりとした風情がありました。 甘い歌声と、ふわりと宙に浮くような曲調。晴れた日の活気ある音楽も良いですが、こういう静かな音楽を家で楽しむのも、また一興であります。

「FiveLan」さんの音楽からは、強い生命力を感じました。 洗練されたメロディラインに乗せて、ボーカルの方が絞り出すように歌うハスキーな声。 その姿からは、格好をつけることなく、ありのままの自分をさらけ出そうとする「誠実さ」が伝わってきます。 歌詞も非常に実直で、言葉の一つひとつが胸に刺さるようでした。飾らない言葉だからこそ、響くものがありますな。

そして最後に、「ザ6億光年ズ」さん。 彼らの演奏からは、音楽を奏でることの純粋な喜びが溢れておりました。 奇をてらわない、ギターとベースとドラムによる直球のバンドサウンド。 どこか懐かしい洋楽の薫りを漂わせつつも、日本語の歌詞を大切に歌っておられる。コーラスワークの瑞々しさは、未完成ゆえの美しさと言いますか、何かが始まろうとする瞬間の輝きを感じさせてくれました。

しっとりとした大人のデュオから、情熱的なバンドサウンドまで。 今の音楽シーンの幅広さを肌で感じられる、素晴らしい予選でございました。