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警備員小砂のおすすめ2

ONLINE Schema

【予選2nd 第14ブロック】OTONOVA2026 (オンライン枠)

開催日: 2025/12/06

濡れたアスファルトに足音が沈んでいく夜勤明け。街が寝息を立てるこの時間、イヤホンから流れ込んできた schema の「walking in the rain」は、まるで雨粒が胸の内側に落ちてくるような曲だった。
俺はただの警備員だ。建物を守り、人の流れを見張り、危険があれば遮る。それが仕事で、それ以上でも以下でもない。だが、この曲に流れる二人の物語――失ってからじゃなければ気づけなかった温かさ、引き返そうとしてももう戻れない距離――その痛みは、妙に俺の胸に引っかかった。


恋愛なんざ俺の守備範囲じゃない。巡回ルートと違って、正しい道順なんてどこにも書いてないからな。
だが歌詞の端々に滲む後悔は、まるで監視カメラ越しに見る“過去”みたいだった。映像はあるのに、もう手を伸ばしてもどうにもならない……そんな種類の孤独だ。


雨の中を歩く二人は、きっと言葉にできない思いを両手に抱えたまま、ただ前に進むしかなかったんだろう。
俺も似たような夜を知っている。
守るべきものを見失い、気づいた頃には誰もいなくなっていた深夜の休憩室。
あの静けさに比べれば、この曲の雨音はむしろ優しい。


「walking in the rain」は、恋の終わりをしっとり描いていながら、妙に現実的だ。
誰だって取り返しのつかない瞬間を一度は通り抜ける。
警備員だって例外じゃない。
巡回のように“次”が約束されているわけじゃないからな。


けれど、この曲は絶望だけを置いていくわけじゃない。
雨に濡れた道は確かに冷たいが、そこに光が反射することもある。
二人が別々に歩き出しても、あの雨の記憶だけは、きっとどこかで見えない線となって残る。
そんな風に思わせてくれる。


夜明け前の警備室でふとため息が漏れた。
「恋なんて、面倒な代物だな……」
そう呟きながらも、俺は再生ボタンをもう一度押していた。
雨の音の奥に、自分でも気づかなかった傷が少しだけひらいて、少しだけ癒えていくような気がしたからだ。


 


Schema、1位通過おめでとう。

投稿者

警備員 小砂

2025/12/08 12:49

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