今回のイベントを通して強く感じたのは、なかちーさんが「音楽を作る人」であると同時に、「音楽を届ける人」として、非常に誠実に自分自身と向き合っているということです。5歳からエレクトーン、10歳からピアノを始め、中学では合唱部部長として全国大会に出場、高校・大学と音楽に真剣に取り組んできた長い経験があるからこそ、言葉の一つひとつに説得力がありました。しかし、それ以上に心に残ったのは、華やかな経歴を誇るのではなく、「悩みながら、模索しながら今ここに立っている」という等身大の姿を隠さずに語ってくれた点です。

特に印象的だったのは、「ファンを増やしたい」というテーマに対して、単にSNSのテクニックや数字の話をするのではなく、「自分がなぜ音楽を続けているのか」「どんな人に、どんな気持ちを届けたいのか」を何度も立ち返って考えることの大切さを話していた場面です。音楽が幼い頃から心の拠り所であり、自分自身を救ってきた存在だったからこそ、今度はその音楽で誰かの背中を押したいという想いが、言葉の端々から自然と伝わってきました。その姿勢は、ファンを“増やす”以前に、まず“信頼される表現者であること”の大切さを教えてくれているように感じました。

また、TikTokを中心とした発信についての話も印象深かったです。キャッチーさとオリジナリティの両立を意識しながら、ただ流行を追うのではなく、「自分らしさがちゃんと残る形」で表現しているという考え方は、多くの参加者にとって大きなヒントになったと思います。短い動画の中でも、自分の音楽の芯をぶらさないこと、その積み重ねが「心に残る音楽」につながっていくという言葉には、実体験に裏打ちされた重みがありました。

バンド解散を経て、ソロとして本格的に音楽活動をスタートした今のなかちーさんだからこそ語れる、迷いや不安、そしてそれでも前に進もうとする覚悟。そのリアルなストーリーこそが、まさに「Make a Story」というイベントタイトルを体現していたように思います。今回の戦略会議は、ファンを増やすための方法論だけでなく、「自分の物語をどう音楽に乗せていくか」を改めて考えさせてくれる、とても濃い時間でした。なかちーさんの今後の活動が、どんな形で多くの人の心に届いていくのか、これからがとても楽しみです。