予選Eブロックもまた、素晴らしい「歌」の宝庫でございました。 特に、声そのものが持つ力強さや、風景を想起させるような楽曲に心洗われる思いがいたしました。

白眉は、「奈月れい」さんであります。 彼女の歌声は、非常に大人っぽく、中性的でありながら、全てを包み込むような女性らしい柔らかさも兼ね備えておられました。 ピアノとストリングス（弦楽器）が織りなすバラードは、淋しげで儚い始まりから、次第に力強さを増していくドラマチックな構成。 その歌声は、まるで映画のスクリーンいっぱいに広がる大パノラマを見ているかのような、壮大な世界を感じさせてくれました。悲しみを超えた先にある希望のようなものを表現されており、実に感動的でした。

「DawnLuLu」さんの音楽も、大変心地よいものでした。 アコースティックギターの素朴な音色と、男女のコーラスワーク。 この曲を聴いておりますと、早朝の山歩きをしている時のような気分になります。 澄んだ空気、木々の間から差し込む朝日、そして目の前に広がる大自然。 そんな清々しい情景の中を、一歩一歩踏みしめて歩いているような、健やかな気持ちにさせてくれました。現代人が忘れかけている、自然との調和を感じさせる音楽であります。

「ひ〜ろ〜」さんのバラードは、冬の陽だまりのような暖かさがありました。 彼の声は優しく、聴く者の心を解きほぐしてくれます。 派手さはなくとも、人の心に明かりを灯すような、誠実な歌声だと感じました。

そして、「Ryo」さん。 彼のしっとりとした楽曲と、少しハスキーがかった声の相性が抜群でした。 「未完成でもどうしようもないほど僕たちはそれだけで愛おしい」。 この歌詞には、ハッとさせられました。 若さゆえの未熟さや葛藤を、否定するのではなく「愛おしい」と肯定する。 その優しさと強さが、彼の歌声に乗ってまっすぐに届いてきました。

壮大なドラマから、身近な温もりまで。 歌というものの持つ多様な力を、改めて感じさせていただいた予選でございました。