この数日、「Mudia」のオーディションを覗き続けるうちに、私はある種の眩暈（めまい）にも似た感覚を覚えていた。それは、この日本に、これほどまでの数のアカペラグループが存在し、それぞれが独自の音楽を追求しているという事実に対する、純粋な驚きだ。

若い頃、バンドブームに乗ってギターをかじった世代としては、音楽といえばギター、ベース、ドラムだった。だが、このイベントで画面に映し出されるのは、マイク一本で多様な音楽を紡ぎ出す若者たちの姿ばかりだ。

今回のブロックも、その多様性を象徴するような名前が並んでいた。「星爛（せいらん）」、「オルトレア」、「Charmant（シャルマン）」、「Mont Blanc（モンブラン）」。こうした響きからは、星空のように繊細で、気品のあるハーモニーが想像できる。聴く前から、その美しいコーラスが目に浮かぶようだ。

かと思えば、「P.P.クィーンズ」、「週末速度 Terminal Velo-Velocity」、「トライアド」、「ZAINICHI☆JAPANESE」といった、一度聞いたら忘れられない、強烈な個性を持つ名前もある。彼らはいったいどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。ジャンルもスタイルも、まったく予測がつかない。

そして極めつけは「うるう微積分学」だ。もはや音楽グループの名前とは思えないが、こういう名前をつけるセンス自体が、彼らの音楽性の表れなのかもしれない。難解だが知的な、計算され尽くしたハーモニーが飛び出してくるのだろうか。

これほど多くのグループが、日々声を合わせ、アレンジを練り、ステージに情熱を注いでいる。この文化の層の厚さと熱量は、私の想像を遥かに超えていた。

Uruや宇多田ヒカルが歌うような、切ないメロディと美しい歌声。私が好む音楽はそういうものだ。だが、彼らがやっていることもまた、紛れもない音楽の探求だ。声という最も原始的な楽器を使って、いかに自分たちらしい表現を生み出すか。そのアプローチは無限にあり、その数だけグループが存在する。

まるで、声だけで構成された広大な銀河系を覗き込んでいるようだ。このオーディションは、私にとって、自分の知らない音楽の世界がいかに広く、豊かであるかを教えてくれる、貴重な体験となっている。