予選Eブロックは、楽曲の構成力や「声」の響きに特徴のあるアーティストが多く、まるで一本の映画を見ているようなドラマティックな時間を過ごすことができました。

特に印象に残ったのは、「奈月れい」さんです。 彼女の歌声は、非常に大人っぽく、中性的でありながら、柔らかく包み込むような女性らしさも兼ね備えていました。 その声質だけでも魅力的ですが、特筆すべきは楽曲のスケール感です。 ピアノとストリングス（弦楽器）を中心としたバラードなのですが、そのアレンジが素晴らしい。 最初は淋しげで儚い旋律から始まるのですが、曲が進むにつれて徐々に熱を帯び、悲しすぎず「力強さ」も感じさせる壮大な展開へと昇華されていく。 彼女の歌が、聴く者にすごく広い世界を見せてくれるようで、そのドラマティックな構成に心を奪われました。オーケストラをバックに歌っているかのような、堂々たる歌唱でした。

そして、「DawnLuLu」さん。 こちらは、最小編成のアンサンブルの美しさを感じさせてくれました。 しっとりとした楽曲の中心にあるのは、心地よいアコギサウンド。 そのシンプルな伴奏の上で、男女のコーラスワークが展開されるのですが、このバランスが絶妙でした。 男声と女声が重なることで生まれる倍音の響きが、楽曲に深みを与えています。 この曲を聴きながら、誰もいない「朝焼け」の道を一人で歩いたら、どれほど清々しい気持ちになれるだろうか。そんな情景を想像させてくれる、透明度の高い音楽でした。

「ひ〜ろ〜」さんのバラードも、心温まるものでした。 彼の声は、優しくて暖かくて、まるで冬の日に飲むホットココアのよう。 技術的な上手さ以上に、その声に含まれる「人柄」のようなものが、聴く者の心を解きほぐしてくれました。

「Ryo」さんのしっとりした曲も良かったです。 ハスキーがかった声が、曲の持つ切ない雰囲気に完璧にマッチしていました。 「未完成でもどうしようもないほど僕たちはそれだけで愛おしい」という歌詞。 完璧を求めがちな世の中で、この言葉は非常に救いになります。未完成であることを肯定する強さ、それが彼の歌声から伝わってきました。

壮大なストリングスから、シンプルなアコギまで。 音の厚みは違えど、それぞれの「歌」が持つドラマ性は、どれも甲乙つけがたい素晴らしいものでした。