この日の東京予選は、最初から最後まで楽しめるイベントでした。

出演者が続くにつれて空気がどんどん濃くなり、観ている側も自然と集中してしまうような流れがありました。その中でBEREDさんのステージは、流れを断ち切ることなく、むしろさらに勢いを足していたように感じます。

登場した瞬間から、変に構えることのない佇まいが印象的でした。演奏が始まると、音がまっすぐ前に飛んできて、余計な説明を必要としません。

いわゆる王道のロックスタイルですが、その分、ごまかしがきかない場でもあります。それを真正面から出してきたこと自体に、この予選への覚悟を感じました。

曲は初めて聴く人にも分かりやすく、自然に耳に残る流れを持っています。ただシンプルなだけではなく、ところどころに違うルーツを感じさせるフレーズがあり、単調にならない工夫が見えました。

会場でも、曲が進むにつれて体を揺らしている人が増えていったのが印象に残っています。

演奏は全体的に落ち着いていて、予選特有の張りつめた空気の中でも音が安定していました。スピードに任せて押し切るのではなく、一音一音を大切に鳴らしているように感じられます。その積み重ねが、ステージ全体の信頼感につながっていたと思います。

ボーカルの存在感も大きく、声にしっかりとした力がありました。感情を大きく振り回すというより、曲の流れを保ちながら前へ進めていくような歌い方で、バンド全体をまとめている印象です。

大きな会場で映えるであろう声質が、この予選の空間でも十分に伝わってきました。

この日の予選は、個性を強く打ち出すバンドも多く、印象に残ること自体が簡単ではなかったと思います。その中でBEREDさんは、奇抜さではなく、音楽そのものの力で存在感を示していました。だからこそ、派手な瞬間よりも「ステージ全体の雰囲気」として記憶に残っています。

この白熱した予選の流れの中で、BEREDさんのステージが一つの軸になっていたことは間違いありません。ロックが持つ分かりやすさと強さを、今の場でしっかり鳴らしていたステージだったと思います。