我ながら、すっかり「Mudia」のオーディションイベントの虜になっている。この数日、いったいどれだけのグループの演奏を聴いただろうか。初めは「声だけで楽器を再現する」という技術に驚き、次は「アレンジや選曲」の妙に感心し、前回は「グループの個性や色」に心を動かされた。そして今回、また新たな衝撃を受けた。それは、アカペラが持つ「パフォーマンスとしての熱量」と「ジャンルの無限の可能性」だ。

今回のブロックも、名前からして強烈な個性が溢れていた。例えば、緋褪（ひざめ）さんや ord. さんのように、名前からしてどこか詩的で、洗練されたハーモニーを聴かせてくれそうなグループ。彼らの演奏は、やはり期待通り、緻密で繊細な声の重なりが美しかった。

その一方で、DOPEさん、PRØTØFAMさん、KICKIN'BOUGIEさんのように、明らかにヒップホップやR&Bのカルチャーを感じさせる名前のグループもいる。若い頃にギターをかじった身としては、あの独特の「グルーヴ」や「ノリ」を声だけでどう表現するのか、まったく想像がつかなかった。しかし、彼らのパフォーマンスが始まると、そんな疑問は一瞬で吹き飛んだ。重低音のベースライン、歯切れの良いリズム、そしてメロディが複雑に絡み合う。これはもう、単なる歌ではなく、一つの完成された「音楽」であり「パフォーマンス」だ。

さらに驚かされたのは、大山☆ハッピーロードさん、キラッと‪☆はぴきゅあさん、Cuz it's 良さん、そして『●』（黒丸、と読むのだろうか？）といった、一度見たら忘れられないユニークな名前のグループだ。こういう名前だと、ついコミカルなパフォーマンスを想像してしまうが、これがとんでもない。もちろん楽しませる演出も巧みだが、その根底にある技術力とハーモニーの正確さは本物だ。観客を楽しませたいというエンターテイメント性と、音楽への真摯な姿勢が両立している。

普段、Uruや宇多田ヒカルのような、しっとりとしたメロディラインを好んで聴いている。だが、今回のオーディションで見た彼ら、彼女らのステージは、そうした自分の好みとは全く違うベクトルの感動を与えてくれた。

それは、技術を超えた「熱量」だ。画面越しだというのに、彼らがこの一曲に、この瞬間に賭けている情熱が、ビリビリと伝わってくる。声という一番生身に近い楽器だからこそ、喜びも緊張も、すべてがダイレクトに響いてくるのかもしれない。音楽の楽しみ方は本当に多様で、その奥深さには際限がない。この数日で、自分の音楽の世界がまた少し広がったような気がしている。