正直に言うと、私はアカペラにそこまで詳しいわけではなく、「すごいなあ」くらいの気持ちで会場に足を運びました。だからこそ、Witsさんの演奏を聴いた瞬間の衝撃は、今でもはっきり覚えています。東洋大学humの2年生同期バンドと聞いていましたが、年次とか経験値とか、そういう情報が全部どうでもよくなるほど、最初の一音から空気が変わりました。

会場には他にも本当にレベルの高いグループがたくさんいて、「全国決勝ってこういうことか」と圧倒される場面が続いていました。その中でも、Witsさんは不思議と耳が自然に向いてしまう存在でした。派手に目立とうとしているわけではないのに、気づけば視線も意識も全部持っていかれていて、曲が終わった瞬間に「あ、もう終わったの？」と思ったほどです。

声の重なりがとてもきれいで、それぞれが無理をしていないのに、ひとつの塊として完成されている感じがありました。素人ながら、「あ、これは相当練習してるな」と伝わってくる安定感があり、安心して最後まで聴けました。全国決勝という大きな舞台で、ここまで自然体でいられるのは本当にすごいことだと思います。

たくさんの素晴らしい演奏を聴いた中でも、終わってから一番思い出しているのはWitsさんです。アカペラの魅力を、難しいこと抜きで「気持ちいい」と感じさせてくれた、大切な時間でした。