予選Bブロックは、非常に興味深い傾向が見られました。エントリーされた楽曲の多くがR&B、あるいはチルアウト（Chill out）の要素を含んでおり、現在のインディーズシーンにおけるトレンドの縮図のようなラインナップとなっていたからです。

この傾向を象徴するのが「SEASIDE SHEEP」です。 彼らのサウンドメイクは、きのこ帝国に代表されるようなシューゲイザー/ドリームポップ的な「浮遊感」を基調としつつ、リズム隊やギターのカッティングにはファンク（Funk）の要素を取り入れています。 このジャンルのクロスオーバーは非常に現代的です。男女ツインボーカルによる音域の奥行き、そして楽曲展開における転調のタイミングなども計算されており、聴き手を飽きさせない構成力があります。「夜を漂う」ようなサウンドデザインは、深夜帯のラジオやプレイリストとの相性が抜群でしょう。

「Ruvi」に関しても、バンド編成でのR&Bというアプローチが光っていました。 ボーカルの「けだるげ」な歌唱法は、技術的な上手さよりも「雰囲気（Vibe）」を重視する近年のトレンドに合致しています。ギターのメロウなトーンも心地よい。 SNSを確認したところ解散されたとの情報がありましたが、こうした良質な音楽が「記録」として残ることも、オンラインオーディションの意義の一つと言えるかもしれません。

一方で、ポップスとしての強度を見せたのが「ざわちゃん」と「影夏」です。 ざわちゃんは、四つ打ち（4/4拍子のバスドラム）というダンサブルなビートに、エモーショナルな歌声を乗せることで、「踊れる切なさ」を表現しています。これはフェスやライブハウスでの盛り上がりを想定した作りと言えます。 影夏は、ポップバラードという王道のフィールドで、声質のユニークさを武器にしています。「大人の女性」と「少女」の二面性を感じさせるその声は、楽曲に物語性を付与する強力なインストゥルメントとなっています。

R&Bという共通項を持ちながらも、それぞれが異なるアプローチで差別化を図っている点が、このブロックの分析における最大のポイントでした。偶然の偏りとのことですが、シーンの潮流を感じさせる興味深いサンプリングとなりました。