→ レポートトップへ

ファンレポート
facebookXLINEHatena

気づけば最後まで聞いてました

【セミファイナル Fブロック】OTONOVA2026 (オンライン枠)

開催日: 2025/12/20

音が流れ出した瞬間よりも、聴き終えたあとに心のどこかが静かに動いていることに気づきました。安納なおさんの「おねがいジャスミン」は、強い印象を残そうとするより、感情の奥にそっと触れてくるような楽曲です。曲が終わってから、その余韻がじわじわと輪郭を持ち始める感覚がありました。


歌声は控えめでやさしく、必要な距離を保ちながら言葉を届けてくれます。一音一音が丁寧に置かれていて、感情を一気に伝えるというより、時間をかけて共有していくような印象です。「お願い」という言葉も切実さを前面に出すのではなく、迷いやためらいを含んだまま差し出されていて、なおさんらしさが自然に伝わってきました。


メロディーやアレンジも、感情を過剰に説明することはありません。一定の温度を保ったまま進んでいくことで、聴き手が自分の気持ちを重ねる余白が生まれています。ジャスミンというモチーフも象徴として主張するより、記憶の端に残る香りのように作用していて、楽曲全体の空気感と静かに呼応しているように感じました。


OTONOVA セミファイナルでは、分かりやすさや瞬発力が注目されることが多い中で、「おねがいジャスミン」が持つ穏やかな説得力は、別の角度から印象を残してくれるはずです。聴き手の中で考え続けられる余地を持った音楽は、それ自体が一つの強みだと思います。


なおさんの表現は、そばに静かに在る感覚に近く、今の音楽がどのように受け取られていくのかを、落ち着いた気持ちで見届けたくなる一曲でした。

オーディエンス参加型イベントメディア


Mudiaの楽しみ方

オーディエンス参加型イベントメディア

JASRAC許諾
第9022815001Y45037号