the Sickさん、セミファイナル進出、本当におめでとうございます。
この名前を見かけたとき、そしてそのコンセプトに触れたとき、正直に言って「簡単には忘れさせてくれないバンドだな」と感じました。病気するほど、聞いていたい。少し挑発的でありながら、どこか本音を突いてくるその言葉は、今の音楽シーンにおいてとても強い存在感を放っています。

神奈川県発、4ピースロックバンドとして2024年に結成し、下北沢や神奈川、東京を中心に着実にライブを重ねてきた歩みは、派手さよりも実直さを感じさせます。ライブハウスという現場で鍛えられた音は、机上の理屈ではなく、観る側・聴く側の体温としっかり向き合ってきた証だと思います。ボーカル川渕純さんを中心にしたキャッチーで繊細な音楽性は、一聴すると親しみやすく、それでいて気づけば頭から離れない中毒性を持っている。まさに“病的中毒音楽団”という言葉が、決して誇張ではないことを実感させられます。

また、奇天烈と表現されるメンバーそれぞれの個性が、決してバラバラにならず、一つのバンドサウンドとして成立している点も印象的です。尖った要素をただ並べるのではなく、ロックバンドとしての芯を保ちながら、遊び心や違和感を音に落とし込んでいる。そのバランス感覚は、一朝一夕で身につくものではありません。短い活動期間の中でも、確かな試行錯誤を重ねてきたことが伝わってきます。

セミファイナル進出という結果は、偶然ではなく、これまで積み重ねてきたライブ一本一本の延長線上にあるものだと思います。会場で音を鳴らし、誰かの心に引っかかり、また別の誰かを中毒にしていく。その連続が、今のthe Sickさんをこの場所へ導いたのだと感じます。

この先、さらに多くの人に知られる存在になっていく中で、音楽の形や立ち位置は少しずつ変わっていくかもしれません。それでも、聴く側の感情に真正面から触れにいく姿勢だけは、きっと変わらないはずです。セミファイナルという舞台でも、the Sickさんらしい“簡単には治らない音楽”を、堂々と鳴らし切ってほしい。大人の一人の音楽好きとして、心からその先の景色を期待し、応援しています。