映画主題歌オーディション予選Dブロック、こちらは非常に音楽的な振れ幅が大きく、聴いていて飽きのこない素晴らしいブロックでした。 特に、アコースティックな響きからエレクトロなサウンドまで、音色のパレットが多彩で、楽器経験者としては分析しがいのある楽曲ばかりでした。

まず、私の耳を捉えて離さなかったのが「TIDELAND」さんです。 彼らの楽曲は、非常に渋く、おしゃれなジャズのエッセンスを感じさせるものでした。 コード進行の複雑さや、リズムの揺らぎ（スウィング感）が心地よく、大人の余裕を感じさせます。 そこに重なるボーカルの方の歌声が、艶やかで大人っぽく、色気がありつつも、どこか「安心感」を覚えるような包容力がありました。 歌詞の「だから明日は迷わないわ」というフレーズ。この一言を聴いた時、その力強い意志と、バックの洗練された演奏が完璧にリンクしていて、グッときました。迷いのない演奏と歌唱、素晴らしいアンサンブルでした。

対照的に、「寺崎ひな」さんのサウンドメイクも興味深かったです。 美しくも不思議なエレクトロサウンド。シンセサイザーの音色が幾重にも重なり、ふわふわとした浮遊感のある楽曲を作り出していました。 彼女の透明感がある歌声が、その電子音の海の中を泳ぐように響き、さらにそこに不思議なコーラスワークが加わることで、幻想的な世界観が構築されていました。 生楽器の温かみとは違う、デジタルならではの冷たくも美しい響きに魅了されました。

そして、「和泉屋勘兵衛」さん。 彼の楽曲は、一言で言えば「渋い」。 流行りに流されない、芯の通った音楽性を感じました。何より、その「年季の入った声」が、楽曲全体に深みと説得力を与えており、ただ上手いだけではない、人生経験を感じさせる「雰囲気」を出していました。

「高山コウヘイ」さんのゆったりとした歌物も素敵でした。 懐かしむような歌詞が、アコースティックな響きに乗って心に染み入り、過去の記憶を呼び覚ますような感覚になりました。

ジャズ、エレクトロ、フォーク。 異なるジャンルの「音」が、それぞれの魅力を最大限に発揮していた、質の高い予選でした。