まつださんの音楽を語る上で欠かせないのは、その圧倒的なバックグラウンドと、それを一度手放したからこそ得られた「人生の深み」です。音楽大学でオーボエやピアノを専門的に学び、研鑽を積まれたプロフェッショナルとしての確かな土台。しかし、彼女の真の魅力はその技術以上に、人見知りや葛藤を抱えて一度は音楽から離れ、2012年に山口県下関市へと移住した「再起の物語」にあると感じます。大人になればなるほど、一度手放した夢を再び掴み取ることの難しさ、そして環境を変えて自分を再構築することの厳しさを痛感するものです。新しい土地での出会いを通じて再び音の道を選び、一歩ずつ今の輝きを築き上げてきた彼女の歩みは、同じように人生の選択に迷い、それでも自分らしくありたいと願う私たちの背中を、優しく、そして力強く押してくれます。

まつださんが提唱する「ゆる🩵ラク」や「ご自愛」という言葉は、決して単なる癒やしや甘えではありません。それは、責任や役割に追われ、自分の心の声を後回しにしがちな現代社会を生きる大人たちにとって、最も誠実で切実な「自分を肯定するための哲学」です。2024年の事務所所属を経て、表現者としてさらなる輝きを増している今、彼女の音楽人生が再生した地である山口で、周南の街をその歌声で包み込むことには、特別な意味があるはずです。

シンガーソングライターとしての瑞々しい感性と、オーボエ奏者としての気品ある旋律が織りなすパフォーマンスは、アコースティックという誤魔化しのきかない形式において、最も深く聴き手の心へと届くことでしょう。このフェスのステージが、まつださんにとっても、会場に集う皆様にとっても、深く心地よい「ふぅーぅ」という溜息とともに、自分自身を愛しむことのできる至福の時間となることを確信しています。これまでの歩みのすべてを乗せた、最高に温かなステージを心より楽しみにしております。まつだはるみさんの新たな挑戦を、最大級の敬意を込めて、全力で応援させていただきます。楽しみにしています！