ラップというとゴリゴリに攻めるか、逆にポップ寄りに振り切るかというイメージが強かったのですが、VANCIさんの曲はその中間を絶妙に突いてきます。言葉のリズム感はしっかりヒップホップなのに、耳に残るメロディラインがあって、気がつくと口ずさんでしまうんです。

たとえば「Mirrorball」は夜のドライブにぴったりで、窓を少し開けて街の灯りを見ながら聴くと、本当に映画のワンシーンのように感じられます。雰囲気に浸れるというのはこういうことかと実感しましたし、気づけば何度もリピートしていました。逆に「スピ!!」は勢い全開で、聴くだけで心にスイッチを入れてくれる曲です。疲れた日でも、再生ボタンを押した瞬間にテンションがぐっと上がるのがすごいと思います。

さらに魅力的なのは、ただノリがいいだけではなく、歌詞の奥に「自分の人生を賭けている」という本気がにじみ出ているところです。もともとサラリーマンを辞めて音楽に飛び込んだと知ったとき、その生き方ごと応援したくなりました。だからこそ、曲を聴いていると自然と背中を押されるような気持ちになるのです。「自分ももう少し頑張ろう」と思わせてくれる力があります。

まだ新しいアーティストでありながら、すでに曲の世界観がはっきりしていて、しかも毎回違った表情を見せてくれるのがすごく面白いです。クラブでかけても映えるし、家で一人で聴いても沁みる。その幅広さを持ちながらも、“VANCIらしさ”はしっかりとブレずに存在しています。