「Movie Grand Prix vol.22」という、新しいオーディションイベントが始まると知った。Mudiaのイベントは、時折こうして「おっ」と思わせる実力派が出てくるから、チェックが欠かせない。 まずは【予選A-1】のラインナップに目を通してみた。ふむ、このブロックはシンガー枠が多いようだ。バンドサウンドもいいが、私が若い頃に夢中になったUruや宇多田ヒカルのように、最終的に心に残るのは「声」そのものの魅力だったりする。そういう意味で、このA-1ブロックは激戦になりそうだ。

中でも、私の目を釘付けにしたのが「amadare」というアーティストだ。 事前に公開されているミュージックビデオを拝見したのだが、まず、その映像のクオリティに息を呑んだ。まるで短編映画のような、非常に高い品質。照明や陰影の使い方が巧みで、全体的にアダルトで色気のある世界観が構築されている。

だが、本当に驚かされたのは、そこに乗る彼の「声質」だ。 これは、なんとも形容し難い魅力がある。 最近の流行りのように、どこまでもクリアで、機械のように正確な歌声とは対極にある。 声自体は、上品なハスキー具合が特徴なのだが、それだけではない。 特筆すべきは、その音程感だ。完璧に中心を射抜くのではなく、まるでアナログレコードの僅かな揺らぎのように、音程に「微細なブレ」を感じさせる。 これは、技術が未熟なのではない。この「ブレ」や「揺らぎ」こそが、とんでもない人間味と色気を醸し出している。

この稀有な声質が、あの映像のアダルトな世界観と完璧にマッチしているのだ。この声があるからこそ、あの映像美が、ただの「綺麗な映像」で終わらず、「生々しい感情」を伴ってこちらに迫ってくる。 私が若い頃に弾いていたギターもそうだが、ほんの僅かなチョーキングの「揺れ」が感情を表現するように、彼の声はそれ自体が楽器として、完璧な表現を成し遂げている。 このA-1ブロック、amadareというアーティストが、他のシンガーとどのような戦いを見せるのか。 歌声の心地よさを何より重視する私にとって、いきなりレベルの高い楽しみができてしまった。