「Movie Grand Prix vol.22」の予選、他のブロックも気になって【予選C-2】のラインナップも拝見した。TALL TALEというメタルバンドも気になったが、それ以上に私の耳を捉えて離さなかったのが「Led Hertz」というアーティストだ。

彼らの音楽を聴いた時、正直、最初は戸惑った。
私が若い頃に弾いていたギターサウンドとは、明らかに質が違う。音の壁というか、ギターが何層にも重なって、まるで轟音の洪水のように押し寄せてくる。
これは私の知っている「ロック」とは少し違うな、と思い、会社の昼休みに、音楽に詳しい若い同僚（20代の彼だ）に、「こういうのは、どういうジャンルになるんだ？」と、こっそりイヤホンを渡してみた。 彼は一口聴いて、すぐに「あ、これ系ですか。いいですね。King GnuとかNEEとか、あの辺っぽい不思議なロックサウンドですね」と、こともなげに言った。

「King Gnu」や「NEE」…名前だけなら、テレビやラジオで耳にしたことがある。だが、彼らがこういうサウンドだったとは。 同僚はさらに「たぶん『シューゲイザー』ってジャンルで調べてみてください」と言う。シューゲイザー？「靴を見つめる者」？ますます分からない。 言われた通りに昼休みにスマホで調べてみたが、もうダメだ。ジャンルの多さと、その「解像度」の細かさに、我々おじさんはとてもついていけない（苦笑）。
結局、よく分からないまま、私はもう一度Led Hertzの音楽に向き合うことにした。

ジャンル名はもう、どうでもいい。ただ、この音は、不思議な魅力がある。 同僚の言う「King Gnu」や「NEE」というアーティストたちがどういう立ち位置なのかは知らないが、もし彼らが今の時代の最先端なのだとしたら、Led Hertzの音楽も、まさに「今」の音なのだろう。 聴き直してみると、この音の洪水は、非常に「男らしいロック」だと感じた。だが、私が知っているハードロックやメタルのような、汗臭い「漢（おとこ）くささ」とは違う。 もっと内向的で、それでいて美意識を感じる。 まさに「粗いようで洗練された」音楽だ。 「粗さ」は、あのノイズ混じりのギターの壁。「洗練」は、その轟音の中で決して埋もれない、美しいメロディラインや、複雑に組み合わされたリズム。 これは、私が昔フェンダーのギターで鳴らそうとしていた音とは全く違うが、間違いなく「ギター」が主役の、非常に高度な音楽だ。 若い世代は、こんなにも複雑で美しい音楽を、当たり前のように聴きこなしているのか。 予選C-2、このLed Hertzというバンドが、私の凝り固まった耳をこじ開けてくれた。彼らの「新しいロック」が、どう評価されるのか、非常に楽しみだ。