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「傷と変容が織りなす主体の再構築」

ONLINE Noi

【予選1st 第17ブロックA】OTONOVA2026(オンライン)

開催日: 2025/11/22

 Noiの曲を聴いてまず最も強く浮上するのは、「傷ついた主体が、崩壊と再生成のあいだで揺れながら世界と再接続しようとする運動」である。声、息、傷、綻び、価値の剥落といった語が反復され、それらは単なる比喩ではなく、主体の内部状態を外部へと転写する媒体として扱われている。主体は内部に溜まった暗さを抱えつつ、それが表面へ滲み出て形を変え、やがて他者や世界との接合面を更新していく。ここでは自己同一性は固定されず、むしろ揺らぎこそが主体の基調となる。


さらに、「痛み」が一貫して否定されない。痛みは切断の印ではなく、むしろ関係を繋ぎ直す触媒のように機能する。断片化された身体や価値の失墜は、世界からの乖離ではなく、別の接続可能性を提示する契機として置かれている。つまり、破綻そのものが生成の温床になる構図がはっきりと示されている。


他者の存在も重要だ。主体は孤立して崩れ落ちるのではなく、痛みや残響を介して他者と絡み合う。そこで形成される関係は救済とも依存ともつかない曖昧なものであるが、その曖昧性こそが主体の再編に寄与している。世界は静的な背景ではなく、傷・声・息といった微細な作用によって常に更新される場として描かれる。


総じて、Noiの表現には、「崩壊=終わり」ではなく「崩壊=変容過程」という美学が通底しており、存在が痛みを経由して新しい形へと移行していくダイナミクスが貫かれている。

投稿者

tsuiterutsuiteru

2025/11/21 04:08

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