野見山正貴「HOME 2023」
この曲は、しっとりとしたバラードで、ボーカル力の確かさを感じさせてくれます。また、特徴のある高音域の伸びや表現力も、心に迫ってきます。若かりし頃の元気あふれる作品とはひと味違い、長年の活動による充実だと言えそうです。曲も、たゆたうような曲で、派手さはありませんが、心に染み入るような効果があります。また演奏も、ほとんどキーボード(ピアノ)のみのシンプルな演奏で、これもかえって、静かなボーカルの落ち着きを引きたてています。
それから、ご本人を思わせるアニメキャラも秀逸です。何を考えているのでしょうか。何を語ろうとしているのでしょうか。何を伝えようとしているのでしょうか。実際にこれから何をするのでしょうか。曲とあわせて見れば見るほど、様々な想像を掻き立てる映像だと思います。
個人的には、この作品には、ある種の孤独とある種の希望の両方を感じます。希望を感じて前に進んでいく、でも、それで、孤独がすべて解消するわけではない。孤独を理解して受け入れつつ(孤独を排除せず)、それでも希望に向かって進んでいく、孤独に対しても敵意のようなものを持たないというような、そういった柔らかさを感じます。
この「HOME 2023」ような静かな作品はあるものの、最近でも、かなりビートをきかせた曲やファンキーな曲もまた得意としているところも魅力です。他の作品では、楽器を増やすことで。かなり音作りを厚くすることも、比較的に容易に実行しているという事実もあります。様々な可能性を秘めている野見山正貴は、今後にも大きく期待できます。
これからも多くの作品を発表して、我々リスナーを楽しませてください。心から応援します。
2024/03/17