「好き」に誠実なオタ・クリエイター
レディオヘッド風の曲調からモータウン、邦ロック、ある時は都会的なサウンドで情感たっぷりに唄い、またある時は学園祭のバンド演奏みたいに初期衝動全開に吠えてみせる。
そんな多彩な音楽性を乗りこなす多聞さんですが、彼の楽曲からはいつも等身大のリスペクトが匂い立つように感じられます。地元や過去への郷愁、あるいは自身を形作った音楽たちへの憧憬…。まず「好き」への誠実さがあって、その上で自分だけの表現を創ろうとしている。
多聞さんは多趣味であり、「オタクであること」をアイデンティティにしながら活動されている方なのですが、前述の(良い意味で)必死な姿勢はまさに「オタク」のイデアであるように思います。言うなれば根っからのオタクミュージシャン。
そんな彼の胸がすくような姿勢から生み出されるカラフルな曲たちが、異国の地で鳴り響いてくれる事を強く願います。
どうやら多聞さんは遠い昔に訪れたバンコクの地に並々ならぬ好感を抱いているようなので、彼の「好き」が、彼の好きな地で放たれたならこんなに素敵な事はないでしょう。
2023/06/01