生きづらさを感じる人に寄り添う曲作り -隠世はてな-
【予選H-2】BSドラマ主題歌オーディション2026
開催日: 2025/09/13
「辛いよね、私も一緒。そんなときの拠り所。」をコンセプトに活動しているシンガーソングライターの隠世はてなさん。
初期の作品は、自らの感じる人生の辛さを吐露する歌詞が中心にあります。私は最初の作品である「拗け」のなかの「孤独に依存した」というフレーズに共感というか、腑に落ちる表現であると感じました。このフレーズ自体、あまり見かけない独特な言い回しです。一般に「孤独」は、友人、同僚、家族などの人間関係を良好に築くことによって避けるべきものでありますが、それに「依存する」とは、「頼りにして、利用する」ということであり、本来、負の概念であるものにすら頼らなければならない状況であると同時に、それを味方にして負の存在ではないとすれば、必ずしも悪い状況ではないという、いい意味での開き直りの逃げ道ではないかと思いました。
初期の頃はインターネット上のみの活動でしたが、その後、ライブに出るようになって活動の幅を広げ、それに伴って、作品も少し変わり、自分だけではなく相手のいる状況の歌詞になっていきました。ライブで必ずと言っていいほど歌われる「今日も生き抜いたキミへ」はその代表といえます。「 どんな1日も生き抜いただけで満点」というポジティブなフレーズで始まるこの曲は、明るいアップテンポな曲ですが、「 結局何もできなかった夜は自己嫌悪しちゃう」という厳しい現実に対する励ましの言葉となっています。初期の自己紹介から、その経験をもとに他者への励ましへと進化しています。
最近の曲は、さらに1周回って、自分が他者への働きかけをするだけでなく、他者から自分に返ってくるものによって、自身が影響を受けるというフェーズに来ています。「 キミがいるから、僕に成る。」は題名からそのものずばりですが、最新の「紡ぐ」においても「 紡いできた言葉たちよ(中略)どうか僕を肯定していてくれ」という詩は一見、自分のことだけを語っているようですが、言葉というものは他者にめけられて発せられるものですから、行って返ってきたものに「肯定して」欲しいという心情の吐露となっています。
このように変化し、進化していくはてなさんですが、一貫してあるのは、自分と同様に生きていくことに不器用な人への寄り添う思いやりが根底にあるシンガーソングライターです。
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