非常に楽しみなテーマ
現在のバンドシーンでは、オンライン上での数字が注目を集める一方で、ライブ動員や物販といったリアルな場での成果がそれに追いつかないという現象が見られます。このギャップは、CDが音楽消費の中心だった時代との比較で、より鮮明に理解できます。
CD全盛期だった頃、音楽は主にフィジカルな商品として流通し、ファンがアーティストを応援する手段は、CDを購入したり、ライブに足を運んだりすることが中心でした。その時代、楽曲を手にすること自体が特別な体験であり、購入者の多くはアーティストに対して強い愛着を持つ「濃い」ファンでした。結果として、CDの売上は直接的にライブ動員やアーティストの人気を示す指標となっていました。
対照的に、現代はデジタル化が進み、音楽がストリーミングやSNSを通じて瞬時に拡散される時代です。誰でも簡単に楽曲にアクセスできる環境は、多くのリスナーにアーティストの存在を広める一方で、音楽との関わり方を浅くしています。プレイリストの一曲として楽曲を聴くことが増え、特定のアーティストを深く追いかけるファンが相対的に減少しているため、オンラインでの再生回数が増えても、それが必ずしもライブの動員数につながるわけではありません。
また、かつてはレコード会社やメディアが主導するプロモーションがアーティストの知名度向上を支えましたが、現在はSNSを通じたセルフプロモーションが重要になっています。そのため、アーティストの「日常」や「人柄」に注目が集まりやすく、楽曲そのものが必ずしもファンをつなぎとめる主軸にならないこともあります。このような状況では、楽曲の認知度が高くても、リアルなコミュニティや支持層が形成されにくいのです。
とはいえ、オンラインで広がった注目をリアルな場につなげる可能性は十分にあります。たとえば、ライブでしか体験できない特別な演出や、リスナーと直接交流できる機会を増やすことで、アーティストとファンの関係をより強固なものにすることができるでしょう。オンラインとリアルの数字のギャップは、音楽の楽しみ方が多様化する中で生まれた現象であり、これをどう活用するかが、これからのバンドシーンを大きく左右する鍵となるのです。
2024/12/04