雷に打たれるように。このバンドと恋に堕ちた。~DOLL PARTS〜
SNSのフォロワー数名の「路上ライブを敢行するあるバンド」への熱を帯びた応援メッセージの連投が気になっていた。それがDOLL PARTSだった。
雑踏で撮影された動画は、音が割れ、照明もない。9月に実施する無料ライヴの宣伝を兼ねたゲリラ演奏。告知フライヤーを貼った譜面台が、強風で倒れる。それを気にせず演奏を続ける ひたむきさと、そっと譜面台を立て直すファンのサポート。
そのアティテュード(態度)に「ロックの源流」を感じた。
数曲続いた演奏は警察官の注意により、ブツリと途中で終わる。奥歯を噛み締めながら、撤収するギターボーカルARISAの姿。
「これはロックしている。」予感は、確信に変わった。
無料ライヴに行ってみよう。そう決心した。
渋谷のライヴハウス。当日、僕は度肝を抜かれた。スリーピースなのに、凄い音圧。メタルでなくグランジ寄り。ソリッドな演奏。エモくキャッチーな歌メロ。速弾き一辺倒とは異なる、雨垂れの様に深淵に響くギターの音色。
鮮やかな照明の下、突き抜けてカッコ良く、3人のメンバーはキラキラ輝いていた。辛い事があっても表に見せず、切なくて、真っ直ぐで。そんな感じだった。
僕は、一曲も曲を知らないのに、心地よく、自然と体が動いていた。
無料ライヴは2ndから。1STのお客さんを一旦退場させ、2ndを並んで待つ人の後にする入場システムの関係で、私は最前列にいた。
中盤、ARISAがアンプに足をかけ、前傾してオーディエンスをあおる。そして突如、目の前にしゃがみ込み、僕の肩を掴んで歌い始めた。先輩のファンの方に、怒られそうなビギナーズ・ラック。
ステージに戻る頃には、肩ではなく、ハートを鷲掴まれていた。
「あなたは、このバンドを支えなさい。」
同時に、そう神から告げられたように感じていた。雷に打たれるように、このバンドと恋に堕ちた。
だからそれ以降、僕はライヴに足を運び、バンドTシャツを着て声援を送るし、チェキのカメラマンがいなければ、進んでやる。
もう、このバンドの音にまみれ、楽しむことが、何よりも幸せなのだ。
僕が神の啓示を受けた渋谷の街を起点に、一人でも多くの人に、DOLL PARTSの音が届くチャンスを得る事を、心から願う。
2023/09/22