DJあさぴから始まること―――あの日のcostaに遡って考えてみた
ここのレビューでもイチオシされてファンの多いオリジナル曲costaの演奏に初めて出逢ったのは、昨年8月下旬の定期の配信の中のことでした。いまや号泣動画として知られるあの配信。
スペイン語のタイトルがあさぴさんの口から発せられて、カウントをとる指が鳴らされ、画面のピアノがわっと歌い出してました。いきなりのカッコよさにただ引き込まれ、ピアノだけの演奏がこんなにカッコよいって何?!何?!という感じでした。この配信は、costaの演奏が聴きたくて何度もアーカイブを観ました。加えてお話が魅力的で、いくつかの言葉は諳じているほど。まるで箴言のようなものです。「スタンドプレーはいやなの、みんなと上にいきたい」とか「でも、自分の尺はもってないと(創作の原点=よきものの基準)」など。
確信出来たのは、このときのcostaの演奏が人を励まし慰め、明日もなんとかなる、ただ生きてさえいればいいんだ、と強く思わせてくれるということでした。自分の曲とはいえ咄嗟にこんな演奏が出来るあさぴさん、凄い!と思いました。
たしかにこのときのあさぴさんは「Yくん、元気だせっ~」と叫んでいて、特定の人に向けたエールとして演奏したのかもしれない。でも、あさぴさんは、「ああすっきりした、わたしがすっきりしてどうするっ」と自分ツッコミしてたように、私たちもこの演奏で、それぞれの日常の苦労や悲しみのようなものから笑顔を取り戻し、明日を信じることができたのでした、まちがいなく。
一方、ライブ会場のような、聴く人たちをしっかり見据えたYouTube生配信の魅力も知らされ、以後ますます、ほかの何人ものネットピアニストたちを追って、イヤホンでスマホやパソコンに貼り付く時間が増えていきました。その音楽シーンは独特でした。チャットコメントで参加して即座に感想とおひねりを投げてくれる視聴者さんがいて、双方で作り上げる空間でした。はじめは、ただ、眺めつつ、音楽とコメントのやり取りを楽しんでいるだけでしたが、だんだんと、参加したいかも、という思いが涌きあがってきました。
ああ、これは、その昔、たくさんのリスナーさんの面白いリクエスト葉書を読みながらレコードをかけてくれた、ラジオのパーソナリティーたちとその番組とに夢中になっていたのと同じだとぼんやり思ったものです。遠い昔、流行りの音楽は全部DJの彼、彼女らからお薦めされるもので、気づくとヒットチャートが熱を帯び、私たちはお気に入りの曲をカセットテープに録音し繰返して聞いた日々。因みに葉書を出したことはありませんでした。
ラジオのそうした日々は50年近く前に去り、長い間、音楽といえば、BGMとしてクラシックCDを流しながら家事をするとか、友人に強く誘われて付き添いのように有名アーティストのコンサートに行くとか、主体性の必要ないものでした。
たぶん、音楽は、演奏だけをぽんと投げてもらっても、充分楽しむことが出来るのですが、何かが加わることで、その先の大きな喜びに至らせてくれるもののようだと、この頃、じわじわ、思っております。
この先の文章がまだ途中までしか出来ていません。ここからが、この文章の目的地なのですが。明日以降に続くということでよろしくお願いします。できるとよいのですが。
2021/02/21