AATA-ジャンルを問わない次代のディーバの魅力
Artists League【歌うたいのステージ】
開催日: 2021/10/31
初めて彼女の歌声を聴いたのは小さなライブスペース。それまでは名前すらほとんど記憶していなかった(当時はひらがな「あーた」で、サーキットイベントなどでその名を目にはしていた)が、お目当てのシンガーソングライターのステージを聴きに行ったライブで偶然その歌声を耳にした。そして、静かにバラードを弾き語る彼女の声の美しさに驚き、一瞬で虜になった。ファルセットに頼ることなく伸び伸びと響き渡る透き通った高音。その声質を引き立たせる自作の楽曲も素晴らしかった。今も我流と謙遜するギタープレイも繊細でいて力強く、トータルで隙のないシンガーソングライターという印象が心に焼き付いた。
以来、他のアーティストのライブより優先して、通える限り彼女のライブに足を運んでいる。ワンマンライブ、ツーマンライブはもちろんのこと、インストアのフリーライブ、より大きなイベントやOAでの出演、つい先日はホテルでのディナーショーと、我ながら随分と通い詰めたものだ。
振り返ってみれば、この間、オーディエンスとしてのモチベーションが途切れなかったのは、彼女のパフォーマンスが常に進化し続けていることによるところが最も大きい。次々と生み出される楽曲たちはバラエティに富み、ジャンルレスと表現するに相応しい多様な魅力に溢れている。そして、シンガーとしての彼女の表現力も進化し続けていることに加え(最近ではバンドセットやサポートのある時はギターを置いてハンドマイクで歌に専念することも多い)、フィンガーピッキングを多用する愛用のギブソンの演奏力と、少し前から多用するようになったギタレレの効果的な導入、そしてその元になるアレンジと、到底我流とは言えないほどにテクニカルで安定感に満ち、同時に冒険心にも溢れている。ここに来てその手元にはサンプラーも登場し、彼女のステージはより厚みを増したサウンドに彩られるようになった。ライブに通うたび、この人はどこまで進化し続けるのだろうか、冒険してくれるのだろうかと、ファンとしてだけではなく一人の音楽好きの人間として楽しみは増すばかりだ。
そしてもうひとつ、彼女はそんな進化と成長を続ける姿で魅せてくれると同時に、初めてステージを目にした時から変わらない別の魅力的な側面も持ち合わせている。それは、歌っている時の姿からは想像出来ないような屈託のない自然体のMC。心にあることを包み隠したり取り繕ったりせず、ストレートに放たれる彼女の言葉の数々は、豊かな人間性と音楽に対する真摯な姿勢をありのままに伝えてくれる。それは間違いなく、多くのファンを惹き付けている重要な要素だろう。
唯一無二の歌声と優れたパフォーマンス、そしてその礎となる人間的魅力。彼女は「シティポップの歌姫」という表現は好まないと口にする。ならば「ディーバ」ではどうだろうか。シティポップに限ることなく、様々な音楽シーンを担う次代の「ディーバ」として、彼女が更なる高みへと羽ばたいて行くことを、ひとりのファンとして心から願っている。
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