私はこの日、自分がステージに立つわけじゃないのに緊張と興奮で指先が冷たくなっていた。

痺れる。

どれくらいの人がElizabeth.eight(ベスハチ)のライブを観ているんだろう。

YouTubeの視聴人数のチェックからSNSサイトの巡回をしつつ出番を待った。

ステージでは音出しが始まった。

いつものこふじさんのギターの音。しゅんじさんのベース。大佐のドラム。

合わさって会場BGMの様にメロディーを作っていた。

最初、会場BGMだと思って聴いていたら、音出しだった。

それくらい整った音だった。

お手本と言うのがしっくりくる。

今日、絶対に1位で通過する！！

ぶっちぎりで行く！！

と言うミワさんの言葉を反芻した。

絶対。絶対だ。

極度の緊張と興奮に頭の後ろが痺れる様な感覚が襲ってきた。

配信でコレなのに来月は実際に見られる。

私はまたフロアにキスするに違いない。

司会芸人さんの

「次はElizabeth.eightです！どうぞ！！」の声でカメラがステージを映した。

フロアには沢山の見知った後ろ姿。

ぎゅうぎゅうの最前。

その様子にあの湿度と温度が感じられるようだった。

照明が瞬いて、いつものSEと共に飛び出してくるメンバーさん。

客席を眺め悠々と入ってくるボーカルのミワユータさん。

コンテストなのに、セミファイナルなのにこの余裕の入場が音楽で生きてきた証しなのだろう。

既に落涙。

こんなにカッコイイバンド…実在しているのか…。　

何度みても夢では無いのかと確認が必要になる。

ミワユータさんがマイクを握りドラムセットの前に立ち合図を出した。

「…ジョー！！！」

響くドラムの音、揺れるマイクのシールド、かき鳴らされるギター、弾けるベース。

この時を待っていた！！

と画面を見つめ両腕を挙げた。

ロットガット〜で始まったステージ。

歌いながら前に詰めたゼルバニアやお客さんと握手しながら歌っている。

穏やかに笑いながら。

しかしソレが歌詞と相まって怪しげな強さを際立たせていた。

こふじさんのアクロバティックなギタープレイと絶妙なバランス。

1秒も他に意識を飛ばせない。

ベスハチのステージは何処をみてもストーリーがあって、エンターテインメント性がぶつかりあっている。

そして、サビ前のあのピリッとした動き。

マイクのシールドを撫でるように摘んでいく様の美しさよ…

ワタシハミワユータサンノツカウマイクノシールドニナリタイ…

曲中の観客の上をまっすぐ見て、伸ばした腕はピストルの様に靭やかで瞬きを忘れた。

最高の音、MC、演奏、歌。

途中のドラム大佐のトラブルすらもステージの一部として取り込んで仕舞う。

シックアゴーでフロアのボルテージが急に沸騰した。

私は興奮と緊張でシックが始まった瞬間、コメカミで血管が破裂しそうだった。

客席からサングラスを拝借して楽しそうに歌う様も研ぎ澄まされて、後ろでカメラを構えるカメラマンさんすら曲を口ずさんでいるが何より「会場全体が楽しんでいる」の証拠だった。

曲明けのMCで

「どなたのファンでもウェルカム！！誰かを思う気持ちは一緒でしょ…」とそう！！そうなんです…！！

「敵じゃない。」

「一緒に一夜のステージをお客さんに届ける共演者である」

私はベスハチのミワユータさんのそんなメンタリティが大好きなのだ。

だから私達ファン通称ゼルバニアもベスハチの名前を汚さぬ様何時でも穏やかやにライブを楽しめる様に行動している。

私達ファンの行動は即ち、世間から見たバンド自体のイメージや評価にも関わってくる。

ただ楽しいをクローズアップして楽しめる空間を作るために。

誰とでも全力で楽しむ。

私達の事を忘れる位売れて欲しい。

沢山の人にベスハチの音楽をライブを楽しんで欲しい。

ふとミワさんが「背負ってる」と言ったことを思い出した。

仲間の思い。休養中のメンバーさん。ファんの気持ち。

色んなモノを背負っている。

その重みたるや…

それですら己の起爆剤にしているように見えた。

シャンブルズが始まった時、ミワさんが配信カメラをおいでおいでと呼び、それに呼応してカメラでミワさんがアップになる瞬間。

「強い」

それは絶対的な「強さ」。

背負っているからできるパフォーマンスだ。

守るものがあると人は強くなる。

では、神様であるミワユータさんはなんだ。

無敵なのではないだろうか。

会場の熱気を、配信も置いていかないこの熱気を。

我々ファンの「見せてほしい！」というこの熱々に煮えたぎった気持ちも、

「行くぞ！」と一気に引っ張てくださるようだった。

ライブが終わる頃にはフロアに居た訳でもないのにヘロヘロになっていた。

喉はカラカラだ。

ペーパーバック様に握りしめた袋もくしゃくしゃになっていた。

投票の締め切りまでジリジリと待った。

絶対に勝てるとは信じていたもののどうにも落ち着かず、SNSをウロウロしていた。

Elizabeth.eightにWINマークが付いた瞬間。

1年で1番のガッツポーズをした。

このコンテストが始まってから尚更涙もろくなってしまった。

日に日に思いが募っていく。

Elizabeth.eightへの気持ちが大きくなっていく。

決勝でWINマークが付いたら私は号泣すると思う。

いや、する。

大きな箱の鼻◎レブを持参しなければならない。

こんなに日が経つのが待ち遠しく、楽しい事はない。

待ち遠しい。

優勝に輝くElizabeth.eightのその瞬間を観るのが。