絶対に外せないライブが誰にでも有ると思う。
私にとって今回のOTONOVA2025ファイナルのZeppShinjukuが正にソレだった。
東北の山の中に住む私は妻という肩書を、母と言う肩書を新幹線のホームに脱ぎ捨てて向かった。
崇拝するElizabeth.eightのミワユータさんが「絶対に優勝する!と言う気持ちで挑んでいる」と仰るのであれば「絶対に現場で百鬼夜行の一部になる」と言うのが私のポリシーだ。
初めは戸惑った遠征での移動も繰り返すうちに慣れてきた。
田舎者には早すぎる新幹線の速度も外を見なければなんてことは無い。
人がごった返す駅の中も、街中も薄目で歩けば夢溢れる場所だ。
ZeppShinjukuは何だか不思議な場所だった。
近代的な高層ビル。
ライブハウス本体は地下に降りる。
ぐるぐると赤い階段を地下へ降りる。
降りているうちに現実から不思議な世界へ迷い込んで居るような気分だった。
入ってみてフロアを覗くとなるほど…審査員席が後ろを占めるのか…
長机と椅子にぴしっと座った審査員の方、いつものライブとは違った空間に緊張した。
この日、Elizabeth.eightのファン通称ゼルバニアはそれぞれ役割が有った。
特に厳密には声がけしていないが、ファンはそれぞれ必要だろうというものを準備して、投票について困っている人が居ないかネットに現地フロアに目を光らせていた。
長丁場でもフロアにゼルバニアが誰も居ないと言う状況を作らない為に「一旦食べにでる?じゃあ、私フロアに居るので!安心して行ってきて下さいね!」と。
全てはベスハチへの投票を1ポイントも取りこぼしたく無かったからである。
コレまで休む事無く走り続けたベスハチの努力をサポートしたい。
ゼルバニアは間違いなく皆同じ所を見つめジリジリと詰めていった。
最後まで気は抜けない。
あっという間にトリのベスハチの出番になった。
ステージ最前に入ると既にメンバーさんがセッティングのチェックをされていた。
その時、ドラムセットの前に見つけてしまった。
休養中のメンバー、フカミさんの衣装のスーツ。
スタンドに掛かっていた。
私は彼のステージを生で見たことはない。かろうじて配信のチャットやらで少し言葉を交わした事がある程度。
でも、紛れもなくベスハチのメンバーである。
涙が出た。
まだSEもかかっていないのに。
大声で泣き崩れる私に周りのゼルバニアは優しく慰めてくれた。
「今ライブ始まるからね。フカミさんのスーツも一緒で良かったね」
ゼルバニアは優しい。
愛の集合体の様だ。
沢山写真を撮りたかったのにスタートで涙腺がぶっ壊れてしまったのでほとんど写真がない。
そんな余裕など無かった。

何とかこのステージを撮りたい!と撮れたステージの写真はコレともう一枚だけ。
デザインがオシャレで有名なベスハチのバンドTシャツでメンバーさんをお迎えしましょう!と言うことでそれぞれ持ち寄った。
様々な色の、デザインの思い出のTシャツ。
私と言えば、言い出しっぺの癖に朝家を出る時慌ててTを丸ごと玄関置いてきてしまい、ボノのダイさんにお借りする始末…お恥ずかしい…
何時ものSEが流れ、ゼルバニアは一斉にTシャツを掲げた。
まるでロイヤルを迎えるパレードの様。
ベスハチ帝国ここにあり!!!を感じる瞬間だった。
本能が言った「百鬼夜行になりにきたんだろう。」
私の中のリミッターが外れた。
1曲目は「シャンブルズ」
アクセル全開だ。
ミワユータさんが歌う
照明に照らされてニヤリと口元を歪めて。
怪しげな音に乗って、私達の心を奪い百鬼夜行に仕立てていく。
「登場人物、全員バカ!バカ!!」
振り上げた拳に、頭上から降ってくる音に周りのゼルバニアの湿度に茹で上がってしまいそうだった。
シャンブルズが終る頃私を襲ったのは
懐かしい、久しぶりの感覚だった。
両手の小指から痺れが上がってくる。
肘の下まで痺れてくる。
かつて悩まされた過呼吸の症状状。
極限の興奮と緊張で過呼吸になりかけていた。
両手の平で口と鼻を覆いゆっくり呼吸した。
おちつけ、落ち着け。
ゆっくり、今ぶっ倒れてはだめだ。
幸い直ぐ収まった。
己の「好き」の極限を体感した。
目の前で翻るマイクのシールドを見ながら呼吸した。
普段味わえない経験に身震いした。
生きてる。
過呼吸でさえも愛おしく思えた。
次の曲は「シックアゴー」
正に、今の私にピッタリだと思った。
ベスハチに対する気持ちそのものだ。
「恋愛なんて病気だわ 脳みその錯覚だわ
それでも君が好き 治らなければいいな」
ずっとこのままベスハチをミワユータさんに「病気」のまま生きて生きたい。生きていく。
フロアで人が波の様に揺れていた。
勿論私も。
ステージ最前は酸素が薄くなり呼吸が苦しくなるほどの熱気、汗なのか涙なのか身体から水分がとめどなく溢れ続けてていたが私は飛び跳ね続けけた。足をつりながらも体が止まらなかった。
もう、この際どうなってもいい。
コンテストだという事も忘れてベスハチの爆音とミワユータさんの歌にすっかり支配されていた。
視界に飛び込んで来るのはステージを動き周り、空間を掌握する私達の女王、ミワユータさん。
そこには愛と覚悟が見えた。
各ステージで惜しくも敗れて行った仲間の分も背負って、自らの歴史だけではない。
「優勝する!」
気迫が伝わってきた。
ラスト「あたしバンドマン」
静かなでもダイナミックなロディにミワさんの言葉の1つひとつが浮き上がってくるようで、周りからは嗚咽が聞こえた。
啜り泣き、なんて甘い。
嗚咽。
抱えたモノ、背負ったモノ全てを救済してくれる様な曲だった。
私も、周りのゼルバニアも既にカラッカラだった。
出るものはもう何もないぞと。
ミワさんが客席向かいお辞儀をして恭しく投げキッスをして退場していく…悲鳴に似た嬌声が上がった。
曲が終わっても尚、歓声や拍手、嗚咽は止まらなかった。
こんなに感情が爆発するライブは生まれて始めてだった。
たった15分なんて信じられなかった。
特濃。濃縮還元。果汁100%のジュースも果肉を置いて逃げるレベルだ。
Elizabeth.eightに出会えて良かった。
ライブに来られて良かった。
司会の方に呼び込まれて軽快に入ってくるミワさんに何だかホッとして現実に引き戻された気分だった。
私はその後直ぐに会場を出て、汗も引かぬまま電車に飛び乗り新幹線ホームで受賞式を見守った。
ベスハチ優勝が発表された瞬間、イヤフォンをしながら「ヨッシャー!!」と盛大に叫んだので前に並んだ若者2人に怪訝な顔で見られた。
申し訳無い。とペコリとはしたが気持ちはもう嬉しさが爆発した。
報われた。
カッコイイと追いかけて来たバンドがもっと沢山の人の目に、耳に触れるチャンスが巡ってきた。
そのまま新幹線ホームを駆け回りたい気持ちになった。
沢山の人が関わったこのコンテスト、ミワさんは私達ゼルバニアを褒め称えて下さった。
でも、1番動いて休まず努力したのはベスハチのメンバー、ミワユータさんなのだ。
リーダーとはこうあるべきと言う手本を見た今回だった。
まだまだベスハチから目が離せない。
大人になってからこんなに楽しい人生を送れるとは思わなかった。
フルアルバムも、コレからの活動も楽しみで仕方ない。
ここからがスタートである。
私達ゼルバニアはミワユータさんの百鬼夜行。
何処までもついていく。